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ドクター・ハック

2017年03月17日


著者:中田整一
発売元:平凡社

ドクター・ハック。本名はフリードリッヒ・ハイク。

彼の職業はドイツの軍用飛行機や船舶、それらの関連技術の輸入に携わる日本海軍および陸軍のエージェント。つまり、スパイ。色々と日本のために暗躍するわけなのですが、その活躍タイミングは2回ほどある。

1回目は1937年に締結される日独防共協定締結の締結に際して。
2回目は1945年に行われた、日本の終戦対策にさいして。

日本の平和のために活躍した、ドイツ人スパイがいただなんて、はじめて知りました。

戦前の外国人スパイと言うと、ゾルゲ事件のリヒャルト・ゾルゲくらいしか知らなかったのですが。

歴史の闇消えて無くなりそうな、ドイツ人スパイのハナシを見つけ出してきた、著者がすごい。

そして、なぜにドクター・ハックが終戦工作をしたかというと、「誰に終戦工作をするべきなのかどうか?」ということを知らなかった、当時の日本政府もすごい。




ドクター・ハック: 日本の運命を二度にぎった男


タイトル:ドクター・ハック
著者:中田整一
発売元:平凡社
おすすめ度:☆☆☆(ですな)
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マラス

2017年03月03日


著者:工藤律子
発売元:集英社

マラスとは中米ホンジュラスの若者ギャング集団のこと。アメリカ・ロサンゼルス西部のヒスパニックギャング集団が源流と言われているマラス。なぜに、アメリカのギャングが???という話になるのですが、2000年代初頭、カリフォルニアでは不良外国人を逮捕後、そのまま祖国にお繰り返していたのだとな。で、そんなアメリカから送り返されて来たギャング集団が、母国ホンジュラスでもギャング活動を行うようになってきたとな。

ここだけ切り取ると、アメリカの新自由経済が−とか、アベが−、ジミンガーと騒ぎ出しそうな方々が多いのですが、ことはそこまで単純ではない。
ホンジュラスを始めとした中米諸国には、凶悪な若者ギャング集団を生み出す素地が、最初からあったのだ。

腐敗しきった司法と政治。産業と言ったらバナナや珈琲のプランテーションくらいしかない。アメリカンドリームも、自己責任も、自助努力も、すべての言葉が虚しくなってしまうほどの貧困と、どうにもならない富の断絶。そしいぇ、形成されるスラムと、大都会。

そんな世界で大人はまともに子どもを育てることなどできず、子どもは大人を信頼することができず。もっとも身近な存在である親ですら、信頼出来ない子どもたちが、街にあふれて、ストリートチルドレンとなってしまう。

そういう世界で、組織に属することと、食料とお金を得ることができるギャング集団が、心地よく感じられないわけがない。

でも、当然ですが、ギャング集団が平和な世界なわけはない。

政府から徹底的に取り締まられ、敵対するギャング集団からは命を狙われる。

そういう状況に嫌気を感じた若者が、相対的に平和で安全なメキシコを目指し、さらに平和で安全なアメリカを目指す。

この悪循環は、ドナルド・トランプが言うように、メキシコとの国境に壁を築いたからと言って解決するものでもないわけで。

でも、本書には、小さいながらも解決する糸口が紹介されている。元大物ギャングで、現在は牧師として、刑務所に収監されているギャングたちに、聖書の教えを説いているアンジェロ。日本でも元ヤクザの牧師や、僧侶はいるけれど、それよりエグい世界でエグいことをやっていた人間が、神の僕となったわけです。

そして、そのアンジェロが悔い改めさせた若者や、ギャング集団から抜けだして、気質として平和に過ごしている若者も紹介されている。

ギャングから若者を救うのは、信頼できる大人と、頼れる仲間だということがよーく分かる。それがあっての、教育であって、仕事である、と。

まずは信頼できる・信頼されるという関係性を与えてあげて、それで教育を受けさせて、そして手に職をつけさせる。それが刑務所の中にならず、地域や、社会であることが重要なんだな、とおもう。

むろん、おむろん、家庭が一番重要なわけだ。

日本の場合、学校や、保育園に、幼稚園、塾や、児童会が、こういう存在にならなければ駄目なんだろうなと思うわ。

そういうことを感じてしまう1冊。




マラス 暴力に支配される少年たち


タイトル:マラス
著者:工藤律子
発売元:集英社
おすすめ度:☆☆☆☆(いろいろ考えさせられる本ですな)

ヤクザマネー

2017年02月28日


著者:NHKヤクザマネー取材班
発売元:講談社

NHKスペシャルで取り上げられた「ヤクザマネー」、その取材の裏側を紹介した本。

金に色はないということで、どんどんヤクザと素人の境目がなくなってきましたよね。恐喝や、強盗、麻薬や、売春、みかじめ料で収入を得ているヤクザ、いなくはないでしょうが、それは、もはや、レアケースとなっている。

企業舎弟どころか、フロント企業でもない、共生者がヤクザマネーを支えるとな。

共生者というと、なんだかラブ&ピースなイメージがありそうですが、そうじゃないと。

しかし、資金の出所がおれおれ詐欺だったり、ヤミ金だったりするだけで、そこから先は、フツーの金融関係者とやっていることが変わらないんじゃないかしら?と思ってしまう。

まぁ、投資した資金が回収できないときに、命をとられたりはしないけれどね。

いや、するか。

とはいえ、ヤクザマネーのようにリスクもリターンも一気にとるような方々がいるには事実で、そんな方々を頼っている方々もいるのは事実で。

でも、なくそうとすると、ヤクザマネーが大暴れしている新興市場jitaino息の根を止めてしまうことになるわけで。

流行っているところ、金が動くところにヤクザがやって来るのは、現代やくざの原型を作った山口組3代目田岡組長のお陰でと言うか、力なのだろうな。

日本のアングラを調べるには、山口組について調べなければならないし、山口組のしのぎを調べておけば、これから流行る悪いこともわかるわけだな。

しかし、この本の内容は、ある意味、パナマ文章ですな。

そして、なぜ、NHK出版でなく、講談社から出てるのだ?



ヤクザマネー

タイトル:ヤクザマネー
著者:NHKヤクザマネー取材班
発売元:講談社
おすすめ度:⭐⭐⭐(ですな)

中国 汚染の真相

2017年02月26日


著者:富坂聰
発売元:KADOKAWA

中国を専門とするジャーナリストが綴った環境問題@中国について語った本。

いや〜すげーよw

としか言いようが無い。

日本も、アメリカも、イギリスも、ドイツも、経済発展の過程で環境汚染はあったけれど、自浄作用で、なんとか回復しているわけですよ。で、この自浄作用は経済という薬があったからでさ。

社会主義な国には「経済効率が悪いからなんとかしよう」って発想がなかったから駄目なんだろうな。

キューバのように「成長しない」に舵を切ればよかったのだろうけれど、面子を大事にする中国にはそれができなかった。

中国人は賢いから、ちゃんとやれば、環境だって回復すると思うんだけれどな。

でも、長江の流れを止めちゃったのは駄目だったんだろうな、とも思うわけだ。

とりあえず、水も、燃料も、無駄遣いやめて、省エネですわな。

でも、客が残さず食べたら恥という考えを持つ中国だと辛いかもね。

そんなことを考えてしまう本ですわ。



中国汚染の真相 (中経出版) Kindle版

タイトル:中国 汚染の真相
著者:富坂聰
発売元:KADOKAWA
おすすめ度:☆☆☆(すごいルポですわ)

プラスチックスープの海

2017年02月19日


著者:チャールズ・モア/カッサンドラ・フィリップス
訳者:海輸由香子
発売元:NHK出版

サブタイトルは「北太平洋巨大ゴミベルトは警告する」ですな。
そうなんですよ。ハワイの沖合、ハワイ都北米大陸の間には、巨大なゴミの海域がある。世界中から海に排出されたゴミが溜まってるんだよね。それは、海流の関係上そうなっているわけで、太古の昔から、陸から出てきたゴミが流れ着いていた場所なのだけれどね。

でも、それが20世紀後半から大きく変わってきた。

それまでは、海に流れ着いたゴミは、時間が立つと消えてなくなるものばかりだった。でも、今は、未来永劫残るものばかり。なぜならば、そのゴミの殆どがプラスチックだから。最近は、生物分解できるプラスチックが増えたとはいっても、それは最近の話。

過去数十年間に排出されたプラスチックゴミは、なくなることなく、北太平洋巨大ゴミベルトに漂い続ける。

なぜそんなことが起きるのか?

我々は便利と引き換えに地球環境を破壊しているんですよ、と。

この悲しい現実を知るために、この本は世界中の若者に読ませるべきだよな。

自分だけが良い、よいう考えがすべてを駄目にしてるんだよな。大きいプラスチックゴミは、波によって破壊され小さく分割されても、腐ってなくなることはない。小さくなったプラスチックは、食物連鎖の最下層に入り込む。

そんな食物連鎖がいいわけ無いだろう。

水銀や、鉛の食物連鎖と同じようなことが起きようとしているわけだ。

ストップ!ゴミの不法投棄。



プラスチックスープの海―北太平洋巨大ごみベルトは警告する


タイトル:プラスチックスープの海
著者:チャールズ・モア/カッサンドラ・フィリップス
訳者:海輸由香子
発売元:NHK出版
おすすめ度:☆☆☆☆☆(名著)

泥の金

2017年02月15日


著者:森功
発売元:文藝春秋社

サブタイトルは「裏金王・水谷功と権力者の響宴」ですな。

ゼネコン業界の談合屋、その頂点に君臨していた水谷建設の水谷功の錬金術と、その金をもとにした政界工作の秘密に迫った一冊。

なんで、「ドロの金」というタイトルなのかというと、日本中のあっちこっちの建設現場で談合を繰り広げていたわけだけれど、特に原発建設や、ダム建設、空港の工事の基礎工事でガッツリカネを稼いでいたから「ドロの金」なのかと。

岩手県の胆沢ダム、通称小沢ダムに関して一気に談合が表に出てきたわけですが、談合はココだけでしていたのではない。

関空や、中部国際空港の工事でも談合が行われていた、と。

で、これらの工事をシノギとして、大きく資金を稼いだのは山口組なわけですわ。

政治家だけでなく、そっち側の話も気になってくる本でしたな。



泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴 (文春文庫)

タイトル:泥の金
著者:森功
発売元:文藝春秋社
おすすめ度:☆☆☆(ですな)

娼婦から見た戦場

2017年02月13日


著者:八木澤高明
発売元:KADOKAWA

サブタイトルは「イラク、ネパール、タイ、中国、韓国」。
つまり、これらの国々で、著者は娼婦の取材を行ってきた、と。

売春というのは世界最古の職業と言われているわけですが、それにもかかわらず、多くの地域では日陰の存在であったわけで。

それは、何故かと言うと、売春には貧困と戦争がつきまとっていたからだと。

趣味と実益兼ねて売春をしているのは日本の炎上交際している女性だけな気がしなくもないけれど、彼女たちだって、目的はお金だったりするわけで、イラクや、ネパールの売春婦よりは豊かな生活を送っているけれど、その実は変化はない、と。

貧困環境下で確実にお金を稼ぐ方法が売春だったりするわけで、そんな貧困を産み出すのは戦争であったり、経済成長から置いてけぼりを喰らってしまったりすることばかりなのだけれど、この例から漏れてしまっている人々もいる。

その例がネパールの話で紹介されている。

ヒンドゥ教のカースト制度のためにお金を稼げる職業につくことができず、売春をすることが人生として強制される売春カーストがあるのだ。

ありえないような世界の話だけれど、コレが世界のリアルなのだと思うと、なんかいたたまれなくなってくる。

それと、著者はイラク戦争後のイラクで娼婦の取材もしている。

サダム・フセインの統治時代、イラクは世俗的なイスラム国家だったために、お酒は呑んでよかったし、あけっぴろげではないけれど、娼婦の村内も認められていた。第一次イラク戦争後、サウジアラビアに近寄っていったサダム時代のイラクでは娼婦が取り締まられることはあったけれど、第二次イラク戦争によりサダム政権が崩壊すると、そうではなくなった。

イスラム国家で娼婦の話。

でも、コレもリアルだ。

そして、アメリカ軍が駐屯していた時代のイラクは、今より圧倒的に安全だった。そして、サダム時代のイラクは独裁政権下だったけれど、圧倒的に平和だった。

民主主義って何なんだろう?

読み終わると、そんなことを考えてしまう1冊。



娼婦たちから見た戦場 イラク、ネパール、タイ、中国、韓国 (角川書店単行本) Kindle版


タイトル;娼婦から見た戦場
著者:八木澤高明
発売元:KADOKAWA
おすすめ度:☆☆☆☆(良書)

小林一三 時代の十歩先が見えた男

2017年02月09日

著者:北康利
発売元:PHP

阪急グループ総裁にして、日本ではじめて田園都市計画を立案し、実行に移した男、小林一三の生涯に迫った本ですな。

単なる鉄道会社ではなく、デベロッパ。沿線に温泉街や、劇場、野球場、百貨店を作り、沿線住民の生活の質が向上したり、鉄道利用者を増やしたりしたわけなのですな。

現在の日本のおける鉄道会社の雛型を作った男なのですわ。

そんな小林一三の生き方を
百歩先の見えるものは狂人扱いされ
五十歩先の見えるものは多くは犠牲者となる
十歩先の見えるものが成功者で
現在を見得ぬものは、落伍者である

と小林一三の『歌謡十曲』を引用して、言い表している。

実際その通りだと思う。

先述したように、小林一三は現在日本における鉄道会社の雛型を作ったわけだけれど、温泉街や、劇場、野球場の開発は、単に何かがひらめいたわけではなく、「だったら、こう思うよね」と、あるといいながある的な発想から生まれたわけですよ。

そんな小林一三の考え方のナニガスキッテ、これが好きだな。
金がないから何もできないと言う人間は金があっても何もできない人間である。

ですな。

裸一貫で成り上がった実業家ではないけれど、鋭い観察力とずば抜けた行動力が、阪急をここまで大きく育てたのでしょうな。



小林一三 時代の十歩先が見えた男


タイトル:小林一三 時代の十歩先が見えた男
著者:北康利
発売元:PHP
おすすめ度:⭐⭐⭐⭐(よい本ですな)

死神の報復 下巻

2017年01月23日

著者:デイヴィッド・E・ホフマン
翻訳:平賀 秀明
発売元:白水社

冷戦絶頂期から米ソの融和、そしてソビエトの崩壊の陰にある核兵器や生物兵器の取り扱いに関するお話。

上巻巻末で登場したゴルバチョフは、巨大な帝国であるソビエト連邦が内側から崩れ始めようとしている状況を見て、様々な手を打ち始める。それはペレストロイカと呼ばれるものであったり、グラスノスチと呼ばれるものであったり。

そんな時期に発生したのがチェルノブイリ事故。

ソビエト指導部が意図的に隠蔽したことには間違いないけれど、発生当初は「どうしたら良いのかわからない」というのが正直なところだった、というのがわかる。

隠し通せるものではないため、ゴルバチョフはチェルノブイリで銃だ事故が発生したことを公表する。

その頃、もはや、ソビエトの金庫にお金はなかったのよね。

この状況を打破するために、様々な改革を打ち出し続けるけれど、それはソビエト権力層の既得権益に手をかけることになり、ゴルバチョフはクーデターを起こされてしまう。

そんなゴルバチョフの心の支えは、家族と、それまでソビエトを悪の帝国と激しく罵っていたロナルド・レーガンアメリカ大統領であった。米ソ両国の核兵器開発によるチキンレースに終止符を打ち、人類を破滅の危機から救いたい、その共通の思いだけが二人の間に強い信頼関係を育んだという。

ゴルバチョフがもう少し、ソビエトのトップにいつづけることができれば、核兵器はもっと減っていた、もしかすると全廃となっていたことでしょう。なにしろ、レーガンとゴルバチョフが核兵器削減に合意できたために、両国合わせて6万発もあった核兵器は1万を切るまで削減されているのだから。

しかし、ゴルバチョフはソビエト最高指導者の職を終われ、ソビエトと言う国家自体がなくなってしまう。

冷戦的に言うとアメリカの圧勝であったが、ソビエトが有していた核兵器や、生物化学兵器がソビエト連邦を構成していた国々から流出してしまう恐れが出てきた。何しろ、そんなに危なっかしい武器はロシアとよばれる国の周辺地域で、管理・研究・保管されていたのだから。

唯一の超大国となったアメリカは、それら国々に出向き、核兵器や、生物化学兵器の回収を始める。が、そんなにかんたんに回収できるようなものではない。そもそも、ソビエトは秘密裏に開発・管理をしていたのだから。それも、炭疽菌や、ペスト、VXガスに、サリンなどを。

冷戦絶頂期に行われた米ソ両国の軍拡競争は、ソビエトの崩壊ということで集結した。しかし、その結果は21世紀の我々に対して大きな負の遺産を残した。アルカイダにISISは、ソビエトから流出した様々な武器を有していると言われているし、3.11以前に発生した最大の都市型テロであったサリン事件で、オウム真理教が化学兵器や毒ガス兵器の技術を手に入れたのは、ロシアであったのだから。

我々は、いつまでこの負の遺産に怯え続けるのであろう?

でも、ロナルド・レーガンとミハエル・ゴルバチョフが核兵器大幅削減に合意をしたおかげで、人類は20世紀に滅亡しないで住んだ、ということがよく分かる本。



死神の報復(下):レーガンとゴルバチョフの軍拡競争


タイトル:死神の報復 下巻
著者:デイヴィッド・E・ホフマン
翻訳:平賀 秀明
発売元:白水社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(教科書としてみんな読むべきだね)

死神の報復 上巻

2017年01月22日


著者:デイヴィッド・E・ホフマン
翻訳:平賀 秀明
発売元:白水社

前評判で圧倒的有利であったヒラリー・クリントンを破り、第45代アメリカ大統領に就任予定のドナルド・トランプ。

完全な泡沫候補で、お馬鹿なアメリカ人が後先考えずに投票した結果だ!と、ヒラリーを支持する方々は騒ぎたて、トランプ支持者を攻撃しているわけですけれど、別にドナルド・トランプが大統領になったからといって、この世界が終わるわけではない。

アメリカの大統領が変わるタイミングで、過去、何度も人類に聞きは訪れたのだから。
それに比べれば、ドナルド・トランプが大統領になったことなど、恐るにならないことだ。

ということが分かる本ですわ。

本書は、ロナルド・レーガンがアメリカ大統領に就任した頃から始まる。

元ハリウッドの俳優で、保守主義で自由主義者。トランプと違ってカリフォルニア州知事を経験しているけれど、バイク運転時のヘルメット着用を義務付ける法案を否決させたり、ベトナム戦争に対して訳の分からない発言をしていたりしたわけですわ。

そんなレーガンが、アメリカの大統領になった。

レーガンが1980年に大統領に就任した当時のアメリカは、今と比較にならないくらい落ちぶれていた。トランプが「世界の警察として、これ以上の金を払えない」と騒いでいますが、その当時だって、同じことが言いたかったはず。でも、言えなかった。なぜならば、冷戦絶頂期であったから。世界の警察であるアメリカは悪の帝国であるソビエトと激しい覇権争いをしていたわけですわ。そんな時に、「おれ、警察やめる」なんて言ってしまったら、ソビエトから核ミサイルの飽和攻撃を受ける可能性がうググッと上がってしまうわけでですよ。

で、核ミサイルの飽和攻撃を受けてしまったら、それを受け止めるすべは、アメリカにはなかった。

別に核ミサイルが駄目!という憲法9情信者的な発想ではないのですわ。

ソビエトと比較し、アメリカの軍事力は大きく劣ってたから。核の抑止力を持ちだしたところで、核による攻撃力は圧倒的にソビエトが上だった。おまけに、アメリカには緊急核攻撃に関する組織だった指揮系統が確立されていなかった。

そういう状況でアメリカ第40代大統領になったのがロナルド・レーガン。

レーガンは保守主義的、自由主義的な政策のほか、ソビエトに対する軍事力の拡充を公約として訴えていたのですわ。どーしても、レーガノミックスばかりが語られますが、実際はそうではないのよね。軍事力の拡充、ソビエトに追いつけ追い越せもしっかりとした政策のひとつとして公約に掲げられていたのですわ。

体現されたのがスターウォーズ計画なわけで。

で、では、アメリカより優位に立っていたソビエトが、なぜ、崩壊してしまったのか?

本書は上下巻組で、上巻ではソビエトの強さにたいしてスポットライトが丁寧に当てられている。

圧倒的な核攻撃力に、アメリカがほとんど有していない生物兵器に化学兵器。アラル海のヴォズロジデニヤ島ではた炭疽菌、天然痘、野兎病、ブルセラ症、ボツリヌス菌、ベネズエラウマ脳炎、ペストなど、40種類以上の各種細菌が実験されていたのだ。そして、それらの細菌が漏れてしまう事故も、幾度と無く発生していたのだ。

そんな状況でありながら、なぜ、ソビエトは崩壊してしまったのか?

アフガニスタン侵攻と、チェルノブイリ事故であることに間違いはない。
ただ、それはきっかけであって、崩壊は様々な要因が複雑に絡み合って発生したわけで。

そういう話は下巻に続く、と。

とりあえず、わかったのは自分の信じる候補者と違う人間が大統領に選ばれたからといって自暴自棄にならないことですな。トランプが大統領になって、おかしなことは起きるかもしれないけれど、少なくとも、ロシアとの関係性は改善すると想いますわ。ソビエトとアメリカの関係性が最悪だった時、人類は何度も滅亡の危機を迎えていたわけだし。

ただ、それを我々が知らなかっらだけなのよね。

そういうことを思い知らされる本なわけですよ。



死神の報復(上):レーガンとゴルバチョフの軍拡競争


タイトル:死神の報復 上巻
著者:デイヴィッド・E・ホフマン
翻訳:平賀 秀明
発売元:白水社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(すごい面白い)

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて

2017年01月10日

著者:北康利
発売元:講談社

読ませる文体で歴史の偉人を取り上げる、作家北康利の本。

今度は、戦後最高の宰相と呼ばれている吉田茂。その吉田茂の半生にせまる。

吉田茂といえば、白洲次郎を懐刀とし、戦後の日本を独立と導いたことが有名。また、池田勇人をはじめとした若手政治家を育てた吉田学校も有名ですな。

しかし、本書は吉田茂の人生の後半に目を向けたのではなく、吉田茂の人生、その前半にスポットを当てているのが面白い。

本書のタイトルのように、なぜ、吉田茂はポピュリズム=大衆に迎合して人気を煽る政治姿勢に背を向けたのか?

それは、生家の竹内家も養子先の吉田家も、資金的に恵まれていたというのもあるでしょう。

しかし、それなら吉田茂よりも金持ちだった近衛文麿が、おもいっきりポピュリストであることを考えると、その仮説は当てはまらない。

そのような性格は、吉田茂持って生まれての性格なのでしょうな。

「気位は高いが間違ったことはしない」

中見出しにあるように、それが吉田茂の性格であり、それ故にポピュリズムに背を向けていたのでしょうなぁ。

家にも、金にもこだわりはなく、自分の信じた道を進む。

それが吉田茂であり、その気位があったから、日本を独立に導いたのでしょうな。

それと、ものすごいリアリストであったというのもあるのでしょう。

世界中の国々と比較して、日本の国力がどれくらいだったのか?

世界政治の常識はどういうものであったのか?

その中で考えた時、はやりの共産主義や、ファシストはどういう位置づけとなるのか?

たぶん、当時の日本では数少ない、「戦争は外交手段の一種であり、その多交渉と同じである」と知っていたのも変えだけなのでしょうなぁ。

だから、勝ちっぷりと同じように、負けっぷりが大事であることを知っていた。

戦争に負けて、全面降伏をしたとはいえ、それで国家がなくなるわけではないことを知っていた。

本来的な性格と、徹底的なリアリストであったというのが、吉田茂の真髄だったのでしょうな。

そして、そんなリアリストは日本において、吉田茂以降登場していないのが悲しいことですな。



吉田茂 ポピュリズムに背を向けて


タイトル:吉田茂 ポピュリズムに背を向けて
著者:北康利
発売元:講談社
おすすめ度:☆☆☆☆(ですな)

1974年のサマークリスマス

2017年01月09日


著者:柳澤健
発売元:集英社

サブタイトルは「林美雄とパックンインミュージックの時代」ですね。著者は「1985年のクラッシュギャルズ」や「1976年のアントニオ猪木」の柳澤健。ドキュメンタリーの人気作家が手掛ける伝説の深夜番組の話が面白くないわけがない。

本書を読んで知った衝撃の事実は2つ。

一つは「ラジオギャング」が林美雄が仕掛けた番組であるということ。
もう一つは、ビートたけしがTBSのオーディションを受けて、落ちていたということ。落ちていたから「ビートたけしのオールナイトニッポン」が始まったのよね。

1960年代から70年代のラジオといったら、カウンターカルチャーの代名詞だったんだよねぇ。娯楽の王様であった映画に、新興勢力であったテレビ。その2大勢力に押されぎみだったラジオは、どんどんどんどんカウンターカルチャーの色合いが強くなっていった。

特にろくすっぽスポンサーのつかない二部深夜帯、つまり27時以降なんて、とくにそうだった。そんな時代の色を思いっきり反映していたのが林美雄の番組だったのいね。同期同世代の久米宏や小島一慶が左寄りなのも、そんな時代状況でラジオをしていたのだから、理解できる。

でも、カウンターカルチャーが力を持ちすぎ、カウンターではなくなってしまった。メジャーになってしまったカウンターカルチャーのカウンターがビートたけしだったわけよね。

この新陳代謝に一回失敗してしまったのがTBS。その後、深夜放送の主役はビートたけしを有するニッポン放送に替わってしまう。タレント、アイドル、芸人、役者、それに局アナ。ニッポン放送は上手にパーソナリティーの切り替えと育成を行っていった。

ビートたけしが人気絶頂になると、大阪で人気を集めていた劇団の役者、古田新太を後釜に抜擢。今やラジオ界のレジェンドとなっている伊集院光の育成も開始していたしね。林美雄が最初にラジオで取り上げて人気に火をつけた荒井由美こと今の松任谷由実がパーソナリティーを勤めたのもオールナイトニッポンだ。辻仁成、鴻上昇二、電気グルーヴ、大槻ケンヂ、福山雅治、ナインティーナイン、様々な有名ラジオパーソナリティーを産み出したのもオールナイトニッポンだった。

でも、それは1990年代まで。

FM各局が力を持ち始め、有楽町からお台場に引っ越し、ニッポン放送が勘違いをし始めたために、また、大きな政権交代。

伊集院光の赤坂、TBSへの移籍。

FMで絶大なる人気を誇っていた玉川みさにも帯番組を持たすなどTBSは、一気に復活。

でも、この時すでに林美雄の魂はあの世に。若者の代弁者で、文字通りカウンターカルチャーを伝え、体現していたラジオの伝説は、すでにこの世にいないのだ。

パーソナリティーとしても、ラジオアナウンサーとしても、プロデューサーとしても稀有なセンスを持っていた林美雄がこの世にまだいたら。ラジコというアプリのお陰で、時間も地域も関係なきくラジオ番組を放送できるようになったいま、どんな番組を作ってくれるのか?それが知りたくてしぃうがなくなる本です。

晩年のビートたけしのオールナイトニッポンを聞き、伊集院光とともに深夜放送を過ごしてきた人間にはたまらない本ですわな。




1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代


タイトル:1974年のサマークリスマス
著者:柳澤健
発売元:集英社
おすすめ度:⭐⭐⭐⭐⭐(名著)

星野道夫 風の行方を追って

2017年01月07日

著者:湯川豊
発売元:新潮社

写真家星野道夫の生き方を教えてくれる本。

アラスカの大地が好きな写真家はもっとワイルドな人なのかと思いきや、そうでもなかった。

アラスカが好きすぎて、慶応大学卒業後にアラスカ大学に入学したという経歴。

写真家として有名だけれど、様々なエッセイも残している星野道夫。

アラスカという自分が惚れた土地を誰かに伝えるためにとった手段が写真とエッセイだったのね、と再確認。




星野道夫 風の行方を追って


著者;星野道夫 風の行方を追って
著者:湯川豊
発売元:新潮社
おすすめ度:☆☆(ですな)

ラスト・ワン

2017年01月05日

著者:金子達仁
発売元:日本実業出版社

ラスト・ワンとは残った1本の脚のこと。

本書は日本代表パラリンピック選手・中西麻耶の半生を追ったドキュメント。

読んでいてコレほど胸が苦しくなった本は久しぶり。
読んでいるうちに引き込まれて、息ができなくなり、電車から降りて一休みしてしまったもの。
それくらいにすごい本だ。

中西麻耶は北京、ロンドン、リオのパラリンピック日本代表。短距離と走り幅跳びを専門にしているアスリートだ。
もともとはソフトテニスで国体参戦を目指していたアスリート。それが仕事上の事故で右足を失うことに。

ニュースで伝え聞くのはここまで。
コレ以外は「きれいすぎるパラリンピックアスリート」として紹介される程度。競技費用を得るためにセミヌードカレンダーを発売したことも話題になりましたもんね。

というのは、表に伝え聞くだけの話。

彼女の歩んできた人生はそれだけではない。

なぜ、セミヌードのカレンダーを出すことになったのか?その裏事情がしっかり書かれている。そこに書かれている話は、何であろう?悪い日本人の典型である。そりゃ、彼女は日本国籍を捨てようとするわけですよ。

それでも、日本代表としてパラリンピックに参加する。

本書の前半は切断される脚の描写にドキドキしてしまうのですが、中盤からは日本の陸上界のゴタゴタに腹が立ってきつつ、そんな環境にめげず世界を目指す彼女の姿に旨が熱くなってきてしまうのですわ。

自分の人生甘いなぁ。。。。自分はまだまだ、人生を楽しんでいないなぁ。。。

なによりも、自分の人生は自分で切り開かないとダメだ、その人生において一番重要なことを教えてくれる1冊だ。




ラスト・ワン

タイトル:ラスト・ワン
著者:金子達仁
発売元:日本実業出版社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(ものすごい良い本です)

トウキョウ・バイス

2016年12月29日


著者:ジェイク・エーデルスタイン
発売元:Amazon Services International, Inc.

この本はまじでやばい。
最初は英語版のみで発売されていたのですが、その後、日本語版が発売されることに。しかし、日本語版を取り扱うことに大手版元が恐れをなしてしまい、発売元は「Amazon Services International, Inc.」。

日本最大の暴力団山口組。その山口組の中でもっとも武闘派と呼ばれる後藤組の秘密に迫り、後藤組から命を狙われるまでになった著者。日本滞在時には警視庁の保護下に置かれ、アメリカの自宅と家族はFBIの保護家に置かれているという事実。

本書のサブタイトルは「アメリカ人記者の警察回り体験記 」で、本書の中盤までは読売新聞の労働環境を面白おかしく綴った内容となっています。著者のジェイク・エーデルスタインは読売新聞初の外国人記者。海外支社に現地採用されたのではなく、上智大学を卒業後、普通に就職活動を行い、読売新聞東京本社に採用されたヒトなのね。

ちなみにこの著者は、浦和支局に配属されるのですけれど、浦和時代に「埼玉県愛犬家連続殺人事件」でスクープを連発しているのよね。

そんなユダヤ系アメリカ人が綴った日本の新聞報道の裏側が面白おかしく書かれているのですけれど、それがどんどんどんどんシリアスになっていく。

そのシリアス度は後藤組組長後藤忠政の悪事をマスコミに暴いたところから加速していく。

日本人社会に生きる異邦人ということで、タブー無しで一気に切り込む内容。創価学会も、山口組も、バーニングも、朝鮮総連も、警視庁も、日本人がゴッドファーザーの世界を見るかのような視点で切り込んでいく。

伊丹十三が自殺ではなく、後藤組の人間により、自殺させられた、なんて記述まである。

そりゃ、日本語で書籍化するのを恐れる版元出てきますわ。

ココまで実名で色んな人間が登場するのじゃ、そりゃ、日本で販売できないよなぁ。。。と。ある意味公然のタブーですけれど、知っているヒトであっても、よっぽどのことでなければ口にしない、サッカー・三浦知良の実父・納谷宣雄の名前も出てくるものなぁ。

話はつい最近、山口組の分裂の話まで出てくる。そして、著者いわく、山口組分裂の引き金を引いたのは後藤組長であるのだとな。司忍組長が残忍なやくざとして世の中的に語られておりますが、実はそうじゃないと。後藤組長によって風紀が乱されてしまった山口組を昔の姿に戻そうと頑張った司忍組長一派と後藤組長一派の戦いが山口組の分裂に繋がったのだとな。

いやはや、すごい本ですわ。

アサヒ芸能や、週刊大衆だってココまでは書かないしな。




トウキョウ・バイス: アメリカ人記者の警察回り体験記 Kindle版

タイトル:トウキョウ・バイス
著者:ジェイク・エーデルスタイン
発売元:Amazon Services International, Inc.
おすすめ度:☆☆☆☆☆
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