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シリア難民

2017年04月04日


著者:パトリック・キングスレー
訳者:藤原朝子
発売元:ダイヤモンド社

すごい本ですな。
もう、「生まれた場所や、育った国で、人生が決まってしまうようなことをしてはいけない」ということを痛烈に感じる本ですわ。とはいえ、1000万人くらいしか人口がいない国に100万人近くも、他の国の人々が流れ込んできたら、そりゃ、大変だよなぁ。ということもわかってくる。

ちなみに、サブタイトルは「人類につきつけられた21世紀最悪の難民」ですわ。

本の中身はシリアから北欧スウェーデンにまでたどり着いたシリア難民ハシームの移動をつぶさに記録したものなのですけれど、登場する難民はハシームだけではない。エリトアリアから、イラクから、アフガニスタンから、世界中の危険地帯から、故郷や家族を捨てて、安住の地を目指す人の姿が紹介されている。

で、昨年来、違法移民を不法入国させる密航業者が悪者だ!的な風潮が高まっているけれど、密航業者だって、不法移民の密入国を、不法入国を手助けして、そこでお金を稼がなければ、生活が立ち行かない人なわけで。

そして、出来る限り難民は受け入れるべきであると考えている北欧諸国だって、そこにはキャパシティがあって、そのキャパシティを超えてしまっては、すべてが破綻するわけで。

うむ。。。

アサドが弾圧と独裁をしていた時代のほうが平和だったんじゃないかしら?と思えてしまう。

でも、それだけが原因じゃない。

破綻国家、破滅国家ではなくとも、国民が弾圧され、未来が描けなければ、そりゃ難民は生まれるよね、と。

答えのない現実をつきつけられる1冊で、読後感はかなり複雑なものになってしまうのだけれど、やはり、平和と安定を生み出すのは教育と産業だよなぁ、とアタリマエのことを思ってしまうわけですわ。

本書の中に何度も出てきてくるけれど、国境を閉鎖しようと、国境に壁を作ろうと、流入する難民を止めることができないんだよなぁ。

だったら、流入する難民を、もっと受け入れつつもコントロールすることと、そもそも難民が生まれないようにすることが重要なんじゃないのか?と思ったりするわけですわ。

繰り返しますが、生まれた場所や、育った国で、人生が決まってしまうようなことをしてはいけないのですわ。




シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問


タイトル:シリア難民
著者:パトリック・キングスレー
訳者:藤原朝子
発売元:ダイヤモンド社
おすすめ度:☆☆☆☆☆(これは教科書として、学生に読ませるべきだな)
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となりのイスラム

2017年02月01日
著者:内藤正典
発売元:ミシマ社

著者は同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。

そして、本書のサブタイトルは「世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代」

新しくて古いイスラム教に関する入門書ですね。

我々はキリスト教文化圏のフィルターを通してしか、イスラム教を見ていなかったのね、と痛感できる本。

日本は八百万の神の国なんだから、互いに違いを認め合えば、うまくいくんじゃないかしら?と思っていたりもします。

そんな本書を読んで「ああ!」と気付かされたのは59ページに記載されていた年で生まれた商人の宗教って記述ですな。日本ではナカナカ実感しにくいですが、中東諸国でヒトが住んでいる場所、つまり、町や村には緑があるんだよな。そして、砂漠に人は住んでいないということ。

で、町や村では農業も行われているけれど、それと同じように商業も行われている。そんな砂漠のオアシスの商人たちに向けて広まったのがイスラム教なのよね。

これは、ドバイでも、クウェートでも、どこでもいいので、中東諸国にいって、デザートサファリをすると体感できますわな。

十字軍とかレコンキスタとか、そういう時代以外、キリスト教徒とイスラム教徒は大きな戦争をしなかったという認識があるのですが、なぜ、起きなかったかというと、イスラム教徒=商人だったから、と。
金儲けの対象ではあったけれど、侵略の相手ではなかったということよね。
喜望峰を回ってバスコ・ダ・ガマがインドに到達した時、アフリカ大陸の東海岸にはモスクが並んで、イスラム商人が存在していたって話もあるしね。

では、なぜ、イスラム教徒とキリスト教徒が憎み合うようになってしまったのか?ということなのですが、そのことに関しては著者の考えが222ページに書いてある。
お話したように、私はヨーロッパ各地にいるイスラム教徒移民の目を通して、いってみれば、ヨーロッパの向こう岸からヨーロッパをみるような研究をしてきました。フランス文化に見えているものと見えていないものは何か、見えないものはなぜ見えないのか。そうしたことについてある程度自覚的に語ることができるようになりましたが、フランスをはじめヨーロッパの社会はまだそこに気づこうとはしていません。
ですから、思考と認識の枠組み全体が違うということを、お互いが認めるところから出発しないと、この衝突は果てしなく続くのではないかと考えています。
イスラムの規範と近代西欧に生まれた規範とのあいだには、お互いにどうにも重なる部分がありません。イスラムは、神のもとにあるから人は自由になれると考え、西欧では神から離れ人にあると考えます。これも、根本的な違いです。
両者はものの考え方とそこから生まれる価値の体系が違うと言ってもいいでしょう。そうならば、両者が、混じり合わずに共存していく方策を探っていくしかないだろうということなのです。
フランスに限らず、西欧諸国が、イスラム世界を啓蒙するのだと言い張り、一方のイスラム世界は、その啓蒙を拒む。結果、テロリストが増えるだけ…。これは、思考の体系が異なるのに、一方をごりごりと相手に押しつければ、相手が変わるだろうというあり得ない思い込みによるものです。この不毛な連鎖を断ち切らなくてはいけません。
まさに、そうだとおもう。

仲良くはできても、絶対に同化、均一化をすることはできないのだから、互いにその差を認めあって、犯さないことをしないとな。
ブルカの着用を認める地域があるのであれば、ハラルが全くない地域も認める。無理やり同化させようとするから、揉めるんだよねぇ。

あと、この本を読んでいてびっくりしたのが、イスラム教にはキリスト教(のカトリックや正教会的な)教会の組織がないんだってね(42ページ)。
だから、モスクを軸にした信者の管理ができないのね。



となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代


タイトル:となりのイスラム
著者:内藤正典
発売元:ミシマ社
おすすめ度:☆☆☆☆(良い本ですね)
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